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2015/08/19

2015シーズンこれまでの戦いを振り返って

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気温22度だった8月15日のカナダ・トロント。しかし、ブルージェイズの本拠地ロジャーズセンターだけは、熱く燃え上がったようだ。

田中将大がこの日ブルージェイズを相手に先発し、完投勝利を果たした。昨年のメジャーデビュー戦と同じマウンドに立ち、当時以上の貫禄でブルージェイズの強力打線を抑えた田中。カーブやスプリットを巧みに使い、9回を5安打1失点。1点リードの5回には無死満塁で打線の主軸を迎えたが、2番打者ジョシュ・ドナルドソンを犠打、3番ホゼ・バティスタをスプリットで空振り三振、クリンナップのエドウィン・エンカナシオンをフライに打ち取り、最小限のダメージで抑え、エースの真価を発揮した。その5回には最速153キロも記録し、その後6、7、9回は三者凡退と後半に成るにつれて調子が上がり、112球を投げ切った。16連戦の中でのア・リーグ東地区首位攻防戦だったが、田中の勝利でゲーム差を1.5に広げ、疲弊していた同僚の士気を上げた。

「本当にいい形で投げられたと思います。いつも助けてもらっているリリーフ陣に休んでもらえたのも良かったです」と田中もブログで綴っている。


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今シーズンはキャンプインから米メディアにケガに関する質問ばかり受けてきた田中。昨年9月にDLから復帰後、2試合で合計120球を投げ、151キロを出しているにもかかわらずだ。

米国球界では、近年、投手の肘が「ホットなニュース」であることは間違いない。過去に例を見ない程多くの投手が肘を故障し、次々にトミー・ジョン手術と呼ばれる腱移植を行っているからだ。

田中の場合、PRP療法という、比較的新しい治療法を選択している。トミー・ジョン手術に比べて過去のデータが少なく、今後の田中に関して想像がつかないのも、彼らがヤキモキする一因かもしれない。

だが、今シーズンを振り返ると、そんな米メディアをよそに、田中のピッチングはキャンプインの初回から圧倒的だった。3月12日のオープン戦初登板は2イニングでわずか19球。直球、変化球を織り交ぜ、2奪三振。どちらの回も三者凡退のパーフェクト投球を見せた。その後も順調な仕上がりを見せ、日本人投手4人目となる開幕投手の座を勝ち取った。


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シーズン後も田中のピッチングは衰えない。3度目の登板(4月18日タンパベイ・レイズ戦)では7回2安打無失点8奪三振。最速151キロを記録するなど、今シーズン初のクオリティー・スタート(QS、先発で6回以上、自責点3点以下)で快投した。4度目の登板(23日デトロイト・タイガース戦)では6回1/3を投げ3安打1失点。昨年7月の怪我以来、初めて中4日で試合に臨み、94球を投げ8奪三振を記録した田中も「試合を通してこういうピッチングが出来たのは良かったと思う」と振り返った。

だからこそ、その直後に右腕に張りを訴え、29日のレイズ戦を回避することになった田中の悔しさは想像に難くない。 しかし、DLから復帰した6月3日の敵地でのマリナーズ戦では、最速154キロをマークし、7回3安打1失点9奪三振で今季3勝目を記録。周囲の不安を払拭した。そして、続く6月9日の本拠地でのワシントン・ナショナルズ戦では、13年にサイ・ヤング賞を受賞しているマックス・シャーザーに投げ勝つ剛腕ぶりを見せ付ける。


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試合前から注目を集めていたこの1戦に関し、田中本人も「シャーザーが相手だったので、なかなか点を取るのは難しいと思っていた。なので、自分がしっかりと粘ってゼロに抑えていこうと考えていた」といつも以上に気合がこもっていたようだ。

初回から好調に三者凡退を重ねると、3回裏にはスティーブン・ドリューが先制弾を放ち田中を援護。4回に同点に追いつかれるもすぐに投球を立て直し、5回は変化球中心で低めに球を集めて三者凡退し、その後も失点を許さなかった。田中は7回で87球を投げ切るが、シャーザーは7回途中4失点で降板する。サイ・ヤング右腕に投げ勝ちチームの7連勝に貢献すると、地元紙も「タナカがエースの名を取り戻した」と絶賛した。

そして7月3日に本拠地で行われたレイズ戦では6回を投げ6安打3失点。勝敗は付かなかったが、延長12回にブライアン・マッキャンが逆転サヨナラ3ランを放ち、チームは7-5で勝利した。

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その後、前半戦最後の登板となった9日、敵地でのオークランド・アスレチックス戦で7回2/3を2安打2失点。1-0で迎えた2回に2失点で逆転を許すも、続く3回は三者凡退に抑え、その後走者を出したのは、4回のワイルドピッチでビリー・バトラーを一塁に送ったのみで、残りのイニングを三者凡退に抑えて本領を発揮した。また今季自己最多の114球を投げて5勝目を挙げた。

「チームも勝つことができたし、自分自身も調子が上がっていると言う実感が持てた登板だったと思う」。「なかなか100球を超えなかったが、それを超えて投げられて、自分の中でまた1つステップを踏めたかなとは思っている」と手応えをつかんでいた。

そして球宴が終わると、ヤンキースの後半戦は田中で幕を開けた。7月18日に行われた本拠地でのシアトル・マリナーズ戦で7イニングで103球を投げ6勝目。低めに球を集め打者を圧倒し、5安打3失点7奪三振だった。その後23日のオリオールズ戦では7回2/3で101球を投げて、再び5安打3失点7奪三振。もうケガを持ち出すメディアは居なくなった。

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ブルージェイズとの3連戦は田中が先発した翌日にチームが敗北を喫し、ゲーム差は0.5に詰められた。それでも、現在地区首位を走るヤンキースは今シーズンもプレーオフ進出をかけてラストスパートをかける。ここまで着実に調子を上げてきた田中は、首位を走るヤンキースに欠かせない存在になった。

「絶対的エース」を表す英語に"lights-out ace"という言葉がある。強すぎて相手の目がくらむという語源だ。今後田中がマウンドから繰り出すピッチングは、対峙する打者だけではなく、ファンも圧倒されるはずだ。視線をライトアウトされぬよう、今後の田中から目を離さないほうが良いだろう。

  • 2015/08/19